西暦2000年まであと少しとなった。今までコンピュータに下二桁の処理をさせてきたツケを払うときが迫っている。ツケを払うのはコンピュータを利用する僕らすべてであるが、対応策を練るのも僕らすべてである。そこで普段の心構えを一つ提案したい。
1998年7月25日、日本語版MS Windows98が発売された。ところで、この「98」とはなんだろうか? もちろんNECの「9801、9821、98NX」シリーズとは無関係である。「98」とは発売年である「1998」年の下二桁をとったものである。前作MS Windows95でもそうであった。
ここでも下二桁である。2000年問題が巷で騒がれ出してずいぶんたつというのに、下二桁が使われているのだ。仮に100年後、MS社とWindowsとが存在したとして、そのときに売り出される新OSはどう区別するのか?
2000年問題に対処するには二つの面からコンピュータ環境を治療しなければならない。一つはプログラムの修正であり、もう一つはデータの修正である。
プログラムの修正とは、今まで下二桁で処理していた命令文を四桁に対応させることである。これはソフトウェアやマイクロコンピュータのチップなどの修正作業なので、専門家に任せるしかない問題である。
一方のデータの修正とは、いままでに貯えられた下二桁の日付情報を四桁に修正することである。こちらは専門家でなくてもある程度は対処できるだろう。また自分の情報を最後に確認することは、自分自身にしかできない。
僕らコンピュータを利用するものは、日々コンピュータにデータを入力している。データの作者である僕らが下二桁のデータを入力していたのでは、2000年問題は複雑になるばかりである。
これからは「年情報を入力するときは四桁」を心がけなければならないと思う。会話中は下二桁でも仕方ないかも知れない。いちいち「せんきゅうひゃく」と発音するのはかなり面倒なことである。しかし、紙にコンピュータに入力するときには、四桁にする癖をつけた方がいいだろう。アラビア数字ならば「19」とたった二本の線を引くだけ、あるいは「1/ぬ」「9/よ」と二つのキーを押すだけのことだ。
2000年問題を専門家に任せるものと放っておくのではなく、些細なことから西暦2000年以後に適応していっても悪くないだろう。
コンピュータにとって四桁はメモリを多く消費する厄介なものである(あった)。人間にとっても、四桁を読み上げるのは面倒なものだ。だが、せめて略称「Win98」、正式名称「Microsoft Windows 1998」でもよかったのではないか? もし2000年問題対応済みOSというのなら、そうして欲しかったと僕は思う。
また、和暦の存在が日本を2000年問題から救うかも知れないという可能性は、皮肉なものである。おそらく大半のコンピュータ関係者は、和暦こそコンピュータ社会の邪魔物と考えていただろう。僕も同意見だった。今後は和暦に対する接し方も変えた方がよいかも知れない。