知名度の高い漫画なので、あらすじは省略します。
とにかく『格好良い』漫画です。モーターヘッド、ヘッドライナー、ダイバー、登場人物、世界設定、とにかく『格好良い』。
また、多くの謎を残したままなことも、読者にいろいろと想像させる楽しみにつながっていて面白い。しかも、謎を残しつつも話のあらすじが公開されているので、いつ打ち切られても、それなりに話になっているという便利な漫画でもあります。
F.S.S.を読んでいると気になることがあります。それは、『人間って強くないといけないんだろうか? 』ということです。
進歩した技術を得 すぐれた物質で満たされていることが… どれだけのものを失って得たものであるのか?
鉄器と馬のシル・ヴィス期と次元飛行を行う我々との間に、はたして進歩はあったのかな?
V巻、P.55でのログナー司令の言葉です。
またVIIII巻 ( 普通IX巻と書くと思うのですが…… ) で、ブラパが天罰によって打ち倒されたことも、どこか科学の進歩に固執することへの批判が込められているように感じます。
けれど、話の全体は、科学力によって作り出されたヘッドライナーとファティマを中心としたものです。彼ら以外は、脇役、或いは雑魚としてしか扱われていません。強くなければ人間に価値がないかのような考え方が強調されているところに、僕は不快感を感じます。
確かに、F.E.M.C.は力そして恐怖、狂気を司るものかも知れません。でも、もっと普通の人々にも、存在意義のある世界も ( そんな世界がジョーカーにあるのなら ) 描いて欲しいと思います。ないのなら……諦めて、ただ『格好良い』だけの漫画として僕は読みます。まァ、おそらく、ないのでしょう。なぜなら、ドラゴンという目に見える、より強い存在にしか、人間が従おうとしていないからです。
F.S.S.を読んでいると気になることがあります。それは、『生き物って進化しないといけないんだろうか? 』ということです。
彼女や純血の騎士を生む母体となったファティマに対するこれらの無慈悲とも思えるこの科学者の行為には人類としての希望が詰まっているのも確かです
「いかなる形に世界が進もうと我ら人類の情報を次なる“物”たちに残しておきたい」彼がL.E.D.ドラゴンに言ったことばです
VIIII巻、P.185でのマグダルに語られるアトールの歴史の一部です。
超帝国の炎の女皇帝、ネードル・ナインは3つの礎を残していったことになる。ナッカンドラ・スバースの騎士の血統とファティマの血。ひとりの人間を完全に復活させるユニゾンクローンチップ、“ドウター”。そして最後に、このスキーンズとヤーン王女の子供である。
VIIII巻、P.194での解説の一部です。
VIIII巻で、今まで謎であったヘッドライナーたちの起源が明かにされたことで、僕のF.S.S.に対する不快感は大きくなりました。
VIIII巻以前の内容から僕は、ヘッドライナーたちは、過去の科学技術で生み出された存在であり、また滅び行く存在だと読み取っていました。コーラスVIの時代にはF.E.M.C.はたった9人に、そしてモーターヘッド、ファティマは次々と消えていきます。それら消え行くものは、科学技術の象徴であり、やがてくるだろう黄昏の時代に期待すらしていたのですが……。
しかし、話の中心は、むしろカレンを始めとする人類の進化にありました。それも科学力を用いた、目的意識の下にある進化です。僕は永野さんが科学に盲信しているところがあると思います。そして、そういう人の人間性は好きになれません。『格好良い』漫画を描く人として、才能のある人だとは思いますが……。