題名 | 著者 | 発行所 | 初版発行 | 価格 | |
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ネットワーク・ポプリ | 花とゆめCOMICS | 柳原 望 | 株式会社 白泉社 | 1997年12月10日 | 410円 ( 本体390円 ) |
50年前の大規模な地殻変動によって、一度は大混乱に陥った近未来。それでも、人々は、生き残った衛星ネットワークシステムを使って、文明を蘇らせつつ、静かに生き延びていました。
主人公・恒平の暮らす街『ポプリポット』は小さく静かな街です。ところがその『ポプリポット』に、『中央市(セントラル)』から、多くの移民がやってきました。『中央市』の人々と『ポプリポット』の人々では、暮らしていた環境があまりにも違っていたために、なかなかお互いを理解できません。それどころか、衛星ネットワークシステムがあるために、彼らはネットワークの中でしか会話をしようとしないのです。やがて、彼らの関係は悪くなってきます。
ところが、『ポプリポット』の恒平だけは、『中央市』からの移民者の住む新市街へと尋ねていきます。なぜなら、以前からネットワークで知り合っていたメアリが、新市街にいるから。
メアリと会ううちに、恒平は、言葉にならないほんの僅かな表情があることに気づいていきます。そして、恒平は『中央市』と『ポプリポット』を繋ぐ……。
恒平とメアリの、なかなか素直になれない関係も、見ていて微笑ましいけれど、電脳ネットワークの持つ問題点も興味をひかれました。特に、メアリからの電子メールを見た、恒平と他の人との反応の違いがおもしろいです。文字しか読めない他の人と、そこから表情や口調も読み取る恒平……。それは、今、僕らがしばしば電脳ネットワークでの論争を激化させて仕舞うことの原因を、あっさりと表現していると感じました。
著者の柳原望さんは、この漫画を描いた時点では、まだPCを初めて買ったばかりだそうです。それにも関わらず、このように電脳ネットワークの弱点を描き出して仕舞ったというのは、とても素晴らしい感性の結果なのだと思います。
またさらに、恒平は電脳ネットワークによって表情が消されて仕舞うことを、僕たちに見せてくれるだけでなく、生身のつき合いでも、僕たちが見落として仕舞っている表情があることも見せてくれます。それは、現実と電脳世界を必要以上に意識させない方法を、僕たちに見せてくれます。
僕は、そんな点が、『ネットワーク・ポプリ』の魅力だと思います。
柳原望さんの考え出した、衛星ネットワークシステム、1998年秋にも、イリジウムが実現してくれそうですね。
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